プロカメラマン

 誕生日に着物体験に来るゲストが、自分へのご褒美にプロカメラマンに写真を撮ってほしいとのリクエストがあり、いろいろな方に聞いて要望の金額でうちの体験に付き合って下さるカメラマンを探してましたが、前に柴又で偶然ゲストの写真を撮って送って下さった写真同好会のメンバーの紹介で引き受けてくださった方にいらしていただくことができました。立川に住む穏やかなカメラマンさんはトロントから来たゲストのハナさんの写真を山本亭をメインにたくさん撮って下さり、たまたま雛節句の時期で貝合わせの展示をしていた女性作家とも写真撮ったりお話したりして、日本人でもなかなか体験できないような日本文化をピンクの訪問着着たハナさんとともに十二分に味わい、彼女の素敵な表情をありったけカメラに収めてくださいました。

 帰りの駅のエレヴェーターの中で一緒になったおばさまが、「綺麗ねえ、こんな素敵な着物姿見られて幸せだわ」と言って下さったのが印象的でしたが、無事終わってみなお帰りになったあと、実はカメラマンさんはロンドンにずっと住んで活動されていて記録映画の分野で有名な方で本も出版されているという事がわかり、あらららまた知らないで失礼なことをしてしまったと深く反省、うちの仕事をお願いできるような方ではないのにまた何かあったら引き受けてくださるとまで言っていただき、ひたすら恐縮しています。皆さん現役で働いていた頃はバリバリのスペシャリストで、そういう方々がうちのゲストを通して色々感じてくださり、その瞬間をより美しく撮ろうとしていただけるなんてなんて幸運なのかと思います。

 日本文化が目の前にあっても、日本人は素直に反応しきれないところがあるけれど、外国人は初めて着物を身にまといその制約された仕草や沢山のレイヤーズ(ひもやベルトをたくさん使うと彼らはびっくりしてます)の締め付けにも新鮮な違和感をもって、着物の美を堪能しています。

 自分も着物着るから言えることですが、あえて日本人が着物着て座っているとなぜか薄く見えてしまう、体が喜んでいない、発するオーラがない気がしてなりません。でも着ている着物がしっかり力を持っていれば話は違ってくる、という事はうちのゲストがきれいなのは着ている着物が凄いせいもあるのかもしれません。着物選び帯選びとゲストは猛烈に迷っていますが、帯も何十万もするものもあります。いいものを見なさい、いいものを着なさいとよくいわれましたが、肌触りとか着心地とか全く違います。知らず知らずのうちに集まってきた高価な着物たち、でも誰も着ないでしまわれてそれで終わってしまったら、あまりにかわいそうです。

 百戦錬磨、ご自分の人生の中でいろいろなことを体験し、表現しそして世界で仕事なさってきた方のお写真はどんなのだろうと楽しみにしていますが、ゲストもカメラマンさんも貝合わせ作者の女性も着物姿見て喜んでくれたおばさまも、みんな幸せそうなお顔でいたことがほのぼのとうれしい一日でした。