衝撃!  impact

shockはネガティブなとき使い、impactは肯定的なとき使うそうで、今はimpact!です。

お昼過ぎうちの前を綺麗な着物姿の若い女性が二人通り、振袖とオレンジの訪問着を着たお二方はここら辺ではめったに見かけないような姿で駅に向かって行きました。多分結婚式の参列でしょうか、涼しいし絶好の着物日和、こんなにきれいなお嬢さん方電車に乗ったらどんなに人目を集めることか。成人式の振袖は皆さん20歳で若くまだ着物姿が決まらず、それはそれで初々しいのですが、ある程度年のいった着物姿はやはり素晴らしい、impactが強すぎました。家の中から見ていただけなのですが、もし外で会ったのならずっと後をついていくところです。秋の結婚式シーズン、それこそホテルとか行ったら綺麗な着物姿のお嬢様方がたくさん歩いていらっしゃることでしょう。

 しばらく呆然としていました。昔習っていた四人目の着付けの先生が、外で綺麗に着付けられた方を見かけるとどこの美容室でしょうかと聞いてみたくなると言っておられましたが、その気持ちわかります。でも、着物姿は着付け師の力量もありますが、本人の力、着物の力、物語もあるような気がします。でもそれは外野の話、ご本人や親御さんや彼氏はどんなに誇らしく喜んでいることか、着付けは黒子ですから。

 金町の桂さんがお相撲の浴衣を縫って持ってきてくださいました。お豆やお茶、サンダルまでいただき、いつもながら嬉しい限りです。この前いらしたときからちょっと時間がたって、またまたいろいろなところから着物やお茶道具などいただいているのでそれらの新着のものをみていただいていたら、桂さんの目が輝きだしました。お茶の先輩とか何人か新着の着物や帯見てくださっているのですがあまり反応がなかったものに次々興味を示し、ずっと衣桁にかかってあった昼夜帯や白地に黒で花の描かれた帯、道行用の絞りの生地、黒の三尺などいろいろ持っていかれました。なんでこんなに反応するのか、不思議でなりません。今まで北海道から九州までいろいろな地方の方から着物いただいていますが、その方の趣味嗜好で素敵な着物をそろえていらっしゃいます。もう自宅においておけないと送っていただくと、最近は使っていただける方がふと現れ、持って行って下さるので、私のうちにいる時間が少なくなっています。それでもこれは着こなせないと、残ったものをこともなげに桂さんは着こなしてしまいます。何故なのか、桂さんの前世は何だったのかしらとまで思うのですが、着物の裏側にある意味的価値がわかる、着ていた方の人間そのものの中にある感性を本能的に察知できるのかもしれません。勝手に思い込んで物語を作るのは外国人のゲストに着物を着せた時なのですが、桂さんにもそれができるのは不思議です。

 外国人に着物着せてきて今わかったのは、私のもの娘のもの、様々な方からいただいたもの、それなりに意味を持ちシチュエーションを持ち、物語を紡いできたきものばかりで、その着物の感性とそれを選んだゲストの感性が一致したとき、ゲストがより美しく見えてきていたのです。桂さん見ていて、人が求めているのは物質的なものではなく、物の裏側にある意味的価値ということが実感としてわかりました。

 初めにに載せた絵は昼夜帯を締めた女性が障子の穴を綺麗に直している上村松園の晩秋という絵です。桂さん、ここに居ました!