深圳の女の子

 結婚式に行く方の着付けが土曜日の午後あり、美容師さんなのでうちにやってきた時のアップのヘアスタイルにまず感動、でも自分でやるのは至難の業だそうです。何の分野においても自分のかかわったことは最後まで気になるのは同じで、先ほど着物類を届けに旦那さんの車で愛犬君とやって来た彼女は、式場でヘアの写真を撮らなかったと言うので、私が着付けの後何枚か写した魅力的なアップの写真を送りました。私としては着付けの方が気になるのだけれど、彼女は式場で撮った写真はすべて正面からだったと嘆いているも、なんだかおもしろい話です。

 うちに来たゲストの写真を撮る時はなるべくいろいろな角度で、いろいろなシチュエーションを選んで撮りますが、本人が何を望むかということを察知するのは至難の業です。日曜日に予約してきたのは中国の深圳に住む20代の女の子二人で、30分早くやってきてコロコロ笑いながらみたらし団子を食べ、暑いので赤の可愛い単衣とひで也工房の朝顔の柄の浴衣に、この前頂いたばかりの半幅帯を締め、有難いことに二人とも相手のヘアをうまく結い上げ、スマホを見ながら伝統的っぽい日本人の髪型に仕上げました。かなり細いひとりと、かなりふっくらしている友達二人だけれど、暑いからタオルも巻かず、なるべく楽に着付け、暑いよ暑いよと脅かしながら、外へ出て帝釈様に向かいました。彼氏は持ったことがない彼女らは、電車の中で私が今まで来たゲストの写メを見せながら、「夫は持ったことがないけれど孫が二人いる」「夫はいないけれど姉の子供と自分の子供と3人で暮らしている」と説明すると、目を丸くしています。ふっくらした女の子は英語が得意でなく(私も同じだけれど)初めはあまり話さなかったけれど、だんだん打ち解けてくると冗談ばかり言いながらコロコロ笑って、お寺のコースを回ってお蕎麦屋さんでアイスを食べ、漬物屋さんで試食し、駄菓子屋さんでは外国人に流行っているというアンパンマンの前髪止めを買い、帰って来て抹茶を飲み、プレゼントにショールとバッグをあげて、最後ハグして別れました。もう完全に孫だなと思っていたら、夜来たレビューに「今度は子供を連れてきます。でもハズバンドはなし!」とあって、私は大笑いしてしまいました。

 彼氏がいようがいまいが、子供がいようがいまいが、みんなそれぞれ人生を楽しんでいます。学歴の高い夫、有名企業、管理栄養士の資格を持ち、可愛い男の子二人いる姪が鬱病になって数年たつと聞いて、本人に会っていないからわからないけれど、彼女は本心で人生を楽しんだことがない気がしています。このことを知る前から、成熟していないで結婚し子供を産み育てる怖さということをずっと考えていたのですが、最近特に何かが終わる気配を感じています。世界も自分もいつ終わるかわかりません。本当は誰だって、明日の朝を元気に迎えられる保証はないのです。でもそして片目をつぶってというのか、未来に「希望」や「理想」や「将来」を置いて、折り合いながら生きているのだと思うのです。達観でもなく、諦念でもない、もっと冷静に「終わり」を見つめ、それが理(ことわり)であることを前提として、命の軌跡を最善の形で残すことをして行かなければならないのでした。いつかは終わる。いつかは終わるのです。この認識をベースに持ち、覚悟して集中して、超越して進化して、感謝して前進して、行くのです。生きていて一番大切な事は、自分の「生命」を、人間性を高めることです。それこそが「幸せ」に通じる道なのだったら、幸せになりたいなら、人間性を、自分らしさを高めていけばいいのです。

 

 翌日は富士山観光に行き、その美しい風景を見てとても幸せでしたと、深圳の女の子たちはメールを送ってくれました。

 [Thank you, Granma Ikuyo,]  面白い可愛い孫たちでした。