ガンダム

 日本のアニメが外国人は大好きで、思いがけないものが大好きと言われると、私の頭は混乱することが多いのです。エアビーの仕事を始めたころは、ワンピース、ナルト、進撃の巨人、ジブリ、火垂るの墓、るろうに剣心、などいろいろなジャンルにわたって好きなものをみんなあげてくれて、特にドイツから来た2mのポールがお台場にある巨大なガンダムを見てきたと言った言葉が印象に残っています。大きなガンダムを見上げている大きなポールはさぞ目立ったことだろうと思うのだけれど、うちで一番大きい着物を着て柴又の参道を歩いた時はずいぶん参道のお店の人達に驚かれました。参道にある駄菓子屋さんにはキャラクターの絵の付いたお菓子があるので、空いている時寄ると、名探偵コナン、ポケモン、クレヨンしんちゃん、鬼滅の刃、などなど本当にいろいろなものがあるのです。

 お寺の中を案内して最後に龍の彫刻がたくさんあるコーナーを通りながら「ドラゴンボール知っている?」と聞くと、ほぼ全員が「イエース」と答えるのが面白いのですが、今年作者の鳥山明さんが亡くなられ、そのことで外国のファンがとてもショックを受け、メキシコでは悲しみのあまり犯罪が減ったという話をしてくれたゲストがいて、私はびっくりしたのです。ドクタースランプアラレちゃん、ドラゴンボールは主題歌などは良く聞いたけれど、私は実際に見てはいなくて、楽しそうだけれどちょっとけたたましく、子供の見るアニメだと思っていたら、うちに来るゲストにとっては古典的なアニメのようでした。いろいろ調べて見ると、1984年に連載を始めた「Dragon Ball」は2億6000万部を超える大ヒット作となり、2年後にテレビアニメ化されてからは、世界80以上の国と地域で放送されてきたそうです。少年ギャグ漫画だから結構”性の目覚め”的な要素も多かったようですが、鳥山さんはマンガなんて読むとバカになるという時代からバトンを受け取り、大人も子供も漫画を読んで楽しむという時代を作った一人でもあり、マンガってこんなこともできるんだ、世界に行けるんだという夢を見せてくれたのです。

 日本の文化って何だろうということをコンセプトにしている私は古い人間だから、初期の頃は「歌舞伎、能、茶道、華道」などを取り上げて説明することが多かったのだけれど、最近はゲストの大好きなアニメの話をしているうちに、今は進撃の巨人、デスノート、東京グール、そして鬼滅の刃など、人間の生死を扱う残酷なテーマのものが多くなってきていて、そして今度はファイナルファンタジーなどゲームのサイトで知り合ったカップルが日本にやってきています。二人で会ったのは2回目で、ただの友達だからホテルも別と言われると、そうなんだと思いながら、それほどにまで若者の心を惹きつけるアニメやゲームの魅力とは、これぞ文化に他ならない、そしてガンダムなども戦争や戦いなど愚かな人間の行動がなぜ止まないのか、仲間を国を守るためには戦わざるを得ないとはなぜなのか、というのが命題なのでした。

 真面目で礼儀正しく穏やかな日本人は、電車の中でもスマホを見つめて静かで騒いだりごみを散らかしたりせず、きちんと列をなしてホームを歩いていると、ゲスト達は驚きます。でもその内面では、沸々と煮えたぎるようなエネルギーを持ち、何かを訴えようとしている若者たちもいます。女王の教室という天海祐希が冷徹な教師役で話題になったドラマのインパクトのあるセリフがユーチューブに上がっていて、子供たちに向けられた非情な彼女の言葉に、年寄りの私がドキッとしています。

 自分達の生きている世界のことを知ろうとしなくて何ができるというんですか。

 大事なのは、子供たちがいじめに立ち向かう精神力を付けることです。いじめに対処する知恵を持つことです。

 人生は一秒一秒の積み重ねです。時間を無駄にする者は、人生を無駄に生きているのと同じことなんです。

 甘ったれるのもいい加減にしなさい!自分の人生は自分で生きるものです。

 

 手塚治虫のブッダというマンガの最終巻にこんなブッダの言葉がありました。

 「あなたは あなたの本心をたよりにして ゾウのように ひとりで堂々と 歩くがよい」

 ブッダは人の生きる道を教えようとして 一生旅をしてまわっていました。その教えの彫刻版が帝釈様にあり、私は何百回もゲストとそれを見ています。それなのにまだ心底わからない。いい加減にしなさい!とお釈迦様に叱られています。

 今現れているものすべてが、みんな教えなのです。アニメも、ゲームも、そしてガンダムも。