Nothando

 一週間ぶりのゲストは初めはカップル二人だったのが、直前にカナダに住む若い男性と、南アフリカの女性が予約してきて、四人となりました。暑いし4人だから浴衣を着せておしまいにしようと思っていたのだけれど、20分前に墨田区から背の高い恰幅の良い24歳のフィリピンの男の子がやってきて、早かったので袷のアンサンブルを着せていたら、UKと中国のカップルがやってきました。何だか今日は仲間に飢えているようで、入ってくるなりみんなで握手して、座って話を始めたら止まりません。一人に袷を着せてしまったから、ピンクの髪のスリムな中国の女の子にも振袖を選んでもらうと、ピンク好きの彼女はブルーとピンクの振袖にピンクの帯を締め、とても綺麗です。

 そこへトリで現れたのが南アフリカのノザンド、濃い緑のブラウスに黒いパンツで、素足にサンダルを履き、旅行者ぽくないので聞いてみると、昨年の8月から国立市の高校で英語を教えているそうで、でも日本語は話せず、シェアハウスに住んでいます。彼女も英語を話すことに飢えていて、入ってくるなりみんなでマシンガントークが始まりました。フィリピン、UK、中国、南アフリカ、国も職業もみんな違う4人が凄まじい勢いで話しているのを聞きながら、着物を着るのは初めてのノサンドに華やかなオレンジとみどりの振袖を着せたら、彼女はずっとビデオでその様子を撮り続け、ティーセレモニーも初めてで、全てを楽しんでいました。

 こんな風景は前にはずいぶんあって、山本亭で一人旅の女の子三人がガールズトークをはじめて1時間座りっぱなしだったことがあり、こうなると私の体験は出逢いの場所かなとも思ったのですが、その日にならないと一緒になるゲストもわからないし、どんな展開になるかも見当が付かないのです。ノサンドにとって空腹だったこと、浴衣を着たらとても暑かったこと、電車に乗り遅れそうで少し走ったことが計算外で、人一倍楽しんでくれたけれどしんどい顔も何回か見せていて、私は一生懸命団扇で仰いだり、チキンカレーの今川焼を食べさせたり、頑張っていたら、お寺の回廊で突然目がピキピキっと痛くなり、ああ毛細血管が切れたと思い、でも動けるし目も見えるから何とか大丈夫だろうと職務を遂行しました。

 ノサンドはお店でみんなでアイスを食べている時もビデオを回しっぱなしで、帰る時バッテリーが切れそうになるほどで、この体験にかける思いは旅行者とは違うし、日本で働いていても地元の人とは接触する機会もなく孤独なのだろうと思います。扇子の開き方がわからず夫にレクチャーされ仲良くしているのを見ていると、もっと日本人と接触して日本語も覚えたらいいのにと思ったけれど、以前来た英語教師をしている二人のアメリカ女性が初めは日本に居たけれど違和感があって、その後韓国に移ったというのを聞いて、日本の学校は閉鎖的なのかしらと考えてしまいました。南アフリカから日本へ良く来たなと感心しつつ、でもそんなことは今は当たり前で、会話と文法を25分間授業で教えると言ってたからそんなに負担ではないかもしれないけれど、来年の8月までどんな感じで過ごすのかと思います。今回たくさんビデオも写真も撮ったから、何回も見直したり喜んだりできる、私はかなり疲れたけれど、振袖を着せて浴衣を着せて柴又へ行って良かったし、最近は身を削って仕事をしている気がします。

 今回は男性陣がとても感動したと熱烈なレビューをくれました。あと何回出来るかわからないけれど、喜んでもらうことが一番うれしいのです。