呉服屋さんでリメイクしていただいた黒の男物の絽の着物を次の日にゲストがカッコよく着てくれて、その写真を持ってお昼過ぎにそちらへ伺ったら、ちょうど京都の仕立て屋さんから、女性用の渋いグリーンの結城紬を男物のひとえに直したものが届いていて、箱を開けてみんなで見てみると、袖にアクセントで線が入っている着物があまりに素晴らしくて感心してしまいました。年配の女性が着るには少し地味だし、だからと言って外国のゲストが好むものではなく、いっそのこと男物にしたら秋口に着るのに最適だろうということになり、丈も幅もいっぱいに伸ばしてもらいました。
柴又のお米やさんのおばあちゃまは本当に紬が好きで、素晴らしいけれどかなり着ているので汚れが目立つ着物を十枚近く染め直したり男物にしたりして、沢山のゲスト達が着てくれています。随分前に中国の男の子がひで也工房の浴衣をとっかえひっかえ着てポーズを取って写真を撮ったことがあり、ジュノンボーイみたいだと思ったのだけれど、今度は誰かふさわしいゲストが来たら紬でポーズを決めて、素敵な写真を撮ってみたいと思うのです。リピーターのドイツの2mポールと弟くんがもしかしてくるかもしれない、それまでに写真の腕を磨いておかなければなりません。素晴らしい結城紬の着物がうんと映えるように。
この結城紬は、日本の文化を伝えるための、武器になる気がします。私の仕事は、着る人がいなくて、あとを継ぐ人がいなくて彷徨っている素晴らしい着物たちを仕立て直して、外国人にその着心地や質感を味わってもらい、その着姿を残していくことだと思っています。作り手や着ていた人の魂がこもった着物を、不特定多数の人、違う民族の方に着てもらうということが、私の方法なのです。