BAYEN TRAUM

 ゆうちょの株主優待のリストを見ながらあれこれ悩んでいた夫が注文したのはドイツビールセットで、ドイツ南部のバイエルン地方にある町アルゴイでつくられた逸品ビールだそうです。1516年にこの地で発令された「ビール純粋令」に基づいた昔からの醸造法で醸されたビールで、原材料は麦と水、ホップに酵母のみ、小ぶりの三本の瓶ビールはどれも芳醇でコクのある味わいに仕上がっていて、ラベルに描かれている白亜の城は、バイエルン国王のルードヴィヒ2世によって19世紀に建造された「ノイシュヴァンシュタイン城」で、早速冷蔵庫で冷やし、夜二人で飲むことにしました。

 午後は34度を超える危険な暑さになるのはわかっているけれど、今日は何も予定がないので、義母の新盆用の白い提灯を買いに人の歩いていない柴又へ行き、帰りに船橋やで夫の好きなくず餅やあんみつ、それに作り立ての鰻弁当を買って帰る途中背中からは汗が流れ、Tシャツでもこんなに暑いのだから、浴衣を着せて帝釈天に行くのは外国人には無理だと感じていました。

 乾燥有機大豆を圧力なべで煮て、辛子と葱と鰹節をかけたつまみに、麹をまぶして焼いたぶり、そしてメインの鰻弁当をならべ、バイエルンの夢<BAYEN TRAUM>というビールを注いで乾杯して二人で飲んだ時、そのあまりの美味しさに絶句してしまいました。暑い時のビールは美味しいし、外国人は日本のビールを褒めてくれるけれど、キリン、アサヒ、サッポロなどいろいろ新種も飲み比べている私たちにとって、このドイツビールは本当に初めての味で、説明書きには「春のそよ風のようにフレッシュなビールで、絶妙なホッピングにより発泡性と軽やかな味わい」とあります。あっという間に一本空け、夫はもっと飲もうというけれど、血圧の薬を服用している私は最近飲まないようにしているので結構酔いが回り、ここでやめて鰻を食べることにしました。

 柴又の小さなお店で作っている鰻弁当はお米も鰻も美味しくて、幸せな気持ちになったのですが、最近のユーチューブを見ていると、食べてはいけないものリストの中に菓子パンや加工食品、マーガリンなどと並んでコンビニのおにぎりがあげられ、いつまでも美味しく感じるためには様々な添加物が使用されていて体の調子が悪くなるから、おにぎりを食べたかったらお米を焚いて自分で握って食べることと忠告しているのです。ブーメランのように人間の作り出した便利なものたちが自分たちの健康を壊している、外国人と日本のコンビニの素晴らしさを讃え合ってきた私は、このところ急激にいろいろな流れが変わって来たことに困惑しています。

 何をどうしたらいいのだか、この長い夏休み、宿題が沢山あるのです。