五年前に着物体験をしてくれたメキシコ人のミネルバが、2年前に結婚したトライアスロンアスリートのファビアンと一緒に再び予約してやってきました。前回は東京オリンピックが延期になり、上位有力選手だったファビアンは韓国の大会に出ていて、一人で来たミネルバは赤い振袖を着て柴又を楽しんでくれたのです。
八月も暑くてゲストは二組のみ、そして私の体調もそんなに良くないから、支度をして二人を待つ間も疲れたなと思っていました。十分遅れるとメールが入り、外へ出ると向こうからそんなに大きくないカップルが歩いてくるのが見て、私は手を振りながらスペイン語であいさつしました。
プロフィール写真で見たファビアンはイタリア系の陽気な男の子に見えたのだけれど、実際は黒髪で目の鋭い独特の雰囲気のある若者で、お父さんはメキシコ人、お母さんはドイツ人でゲルマン血筋を引いているのだけど、黒の絽の紋付き着物を着せ、刀を持った彼をミネがモノクロで写メに撮ると、歌舞伎の海老蔵さん(今は団十郎さんですが)若い時に似ています。諦念、無心、彼が醸し出す雰囲気は、私には初めてのものだし、こういう風に刀を構えたファビアンを即座に撮れるミネの本質を見抜く才能はたいしたものです。
トライアスロンのエリートアスリートとして世界各地の試合に出たり、コーチングもしているのでしょうか、自分の肉体や精神をいつも見つめ研ぎ澄まし鍛錬している厳しさと、人懐っこく懐に入って来る表情が面白く、サイコロジストでもあるミネの多様性のある考え方にもびっくりしながら、一応いつものコースをたどりました。今日が2週間のクルーズツアーの最後で明日帰るから疲れの見えるファビアンはあくびをしたり時計を見るので急いでお寺から帰り、駄菓子屋でお菓子を沢山買って家で団子やお菓子を食べ、すこーし冷酒を飲んでいろいろなおしゃべりをしました。結局これが一番楽しくて、お母さんの故郷はドイツとスイスとオーストリアの境目にあるボーデン湖の近くにあるラードルフツエルだそうで、ドイツの端っこにあり、2年前の結婚式の時はミネのメキシコの親族は多かったけれどファビアンの方は少なくて、そして彼はメキシコとのハーフだから肌も浅黒く、アウトサイダーだと笑うのです。今までたくさんのゲストが来ました。悩んだり喜んだり泣いたり、悩みを抱えているゲストも多かった気がします。
でもこの二人は新しいタイプです。自分達の中にあるものが沢山ある、引出しの中味の多さに私はびっくりしながら、こういう若者たちがじっくり世界を変えていく力になるのだなと実感しています。