本質を感じ取れる能力

 昨日その名前を知ったばかりの沖澤のどかさんが指揮をする動画をずっと見ていて、私はとても妙な気持ちになりました。若い時からクラシックを聞くのが好きで、カール・ベーム、カラヤン、ショルティ、バーンスタイン、小澤征爾などそうそうたる指揮者のコンサートの映像を見ていたのですが、小澤征爾さんが亡くなられ、松本市の音楽祭で体調を崩した指揮者の代理でタクトを振った彼女が実はブザンソンの指揮者コンクールで優勝した実力者であり、その時シュトラウスの「死と変容」を大胆に指揮している姿を見て、能力があり物事の本質を感じ取りそれを表現できるというのは、神様が与えた最高の資質だと思ったのです。勿論音楽的な環境も整っていて、努力も怠らなかったのだけれど、いかに譜面を読みこみ音楽を自分の中に取り込めるか、その中に入り込めるかというのは、自分というものにこだわっていてはできないし、32歳で結婚した相手がリトアニアの男性だという事にも驚きました。

 コロナ前に日系のハーフでハワイ出身の180センチ長身の美女恵ちゃんが2mのリトアニア出身の旦那様と着物体験にきて、付き添いの彼がつまらなそうにしているので、ビッグサイズの男物を着せ、ティーセレモニー体験をしてもらったら初見なのにあまりに上手に抹茶を点てるので、最後に戴き物の茶箱をプレゼントしたのでした。リトアニアは産業もあまりなくて淋しい静かな国だと言っていた気がするけれど、彼はお茶を点てるという本質がわかる感覚を持っていた、のどかさんの御主人もそうなのかもしれませんが、ひょいと何かをくぐり抜けて豊かな風景を見ることが出来る資質は、最終的に人に大きな感動を与え、支えてくれるものになると思うのです。

 のどかさんが解釈して作り出す音楽の音を良く聞く、彼女が選ぶ曲も新しく見直していくと、クラシック音楽に対して新鮮な感覚が蘇りそうです。調布の市民講座で日舞を習っている娘が、十月に銀座の観世能楽堂で行われるチャリティ舞踏公演の生徒の部に出ると言ってきて、橋掛かりから登場し後見もつくというので本人も私もドキドキしています。能と日本舞踊と一中節のコラボに出演なさる先生は実力のある方で、だから生徒も貴重な体験をさせていただけるのですが、決して上手でない娘だけれど踊りの所作や流れを把握することはとても新鮮で、これまでヒップホップやタップダンスなどやってきて、着物のスタイリングや自分の感覚に合う新しい着方を模索している彼女の引き出しの中味がまた増えていくのは嬉しい限りです。

 切羽詰まった時代だけれど、だからこそ見えてくる物事の本質、生きていることの意味を若い世代は掴むことが出来る、得難いチャンスが、そこにあります。本質をつかんだ若者たちが見せる表現や感動は、私達が生きていく上での力となり、救いとなるのです。少しずつ予約が入ってきました。背筋を伸ばして、しゃんとして、私も仕事をして行きます。