袴姿のメキシカンボーイズ

去年の3月に妹さんと一緒に着物体験にきてくれたJosuaは今ツアーガイドをしていて、お客さんを連れて台風のさなかやってきてくれました。迷走台風は時々激しい雨を降らせるけれど、その合間を縫って久しぶりに会った彼は相変わらず不思議なナルシストの43歳、連れは小柄なメキシコシティに住むCesarで、一か月間初めての日本を楽しんでいます。ちょっと体に障害があるようで歩くのが少し大変だし天気も悪いので、うちの中で何枚も着物を着せてファッションショーをしようと浴衣や紬を着せ、カメラマンのJosuaが沢山写真を撮ってくれているのを見ながら、今回は付き添いで予約はしていないけれど自分のことが大好きで、前回も延々と自撮りしていたJosuaに絽の黒紋付を着せるとよく似合い、夫が二人に刀を持たせていろいろポージングして楽しい写真が撮れました。

 Cesarは小柄なのでうちに沢山ある昔サイズの袴が着せられると気が付いて、久しぶりに箱から出して合わせて見るとぴったりで、Josuaには義父の紬の袴を付けてもらい、待合室の絵の前でティーセレモニーの後に写真を撮ると素敵で、初外国人ゲスト袴着用の記念すべき日になりました。日本文化の象徴の着物と袴を着こなせるのがメキシカン男性だなんて、面白いなと思うのだけれど、日本人よりかっこいいのです。

 最後は紺の浴衣を着せて柴又に行きいつものコースを辿りましたが、英語はあまり得意でなくて無口だっCesarは何とイタリア語が好きで、庭園の仏塔の13枚の屋根を私がスペイン語で数えると、彼はイタリア語で数えてくれ、良く聞いているととても似ているのでびっくりしてしまいました。だんだん打ち解けて来た彼は何と午年、この前来たマイアミの彼女も午年だったし、私も午年、引かれあうものがあるのかもしれません。あさっての朝早くメキシコへ帰るそうで、お土産もたくさん買ってJosua の案内で東京のいろいろなところを巡り随分マニアックな旅をして、最後にここでとてもユニークな体験が出来て嬉しかったと言って楽しそうにかえって行きましたが、Josuaは「男性でも女性の着物を着ることが出来るか?」と帰り際質問してきました。「勿論大丈夫」と答えながら、彼はそちら方面のゲストともコンタクトをとるんだろうなと思い、それはそれでいいと私は納得しています。世界は広くて複雑です。でも着物の力は偉大で、その魂は限りなく深いのです。袴の写真はそれを明らかにしてくれています。