本塩沢の単衣を着た、ドイツにいるレナちゃん

 夜中にドイツにいるレナちゃんからメールが来て、電気を付けて読んでみると、この前来た時プレゼントした本塩沢の単衣を着て見たので、その写メを送りますと書いてあり、早速見るとドイツの彼女の家で着物を着ている三枚の写真が添付されていました。感心するくらい綺麗に着ていて、私より少しふっくらしている彼女は私サイズの着物がジャストフィットで、地味目の色合いも若さを引き立て、よく似合っています。赤い帯は大きめの蝶々結びで、帯締めも左右の色違いの洒落たものを締めていて、差し上げたものをうまく使っているのには感心してしまいます。

 金沢大学で勉強していて、日本語もとても上手だけれど、日本で働くのはしんどいからドイツの日本企業で働こうかなといっていたのを思い出し、ずっと日本に居て勉強していたレナちゃんがそういうのだし、日本は良い国だと訪日外国人は口をそろえて言うけれど、オーガナイズされよく働きすべてがスムーズに進む社会のように見えても、本当の自分というものを考えていて芯があるのは外国人だと言っているYouTubeをさっき見ていて、納得しています。みんな優しくて親切で温和な日本人に対して、不愛想でちょっと怖くて何を考えているかわからない、いつも緊張を強いられる外国人だというけれど、歴史や成り立ちやさまざまな虐げや圧力があった上で今が成り立っているという事を忘れず、どんな困難があっても前を向いて微笑んで歩いているウガンダ人のアイデンティティが好きだというデンマークパパの言葉の深さに強く圧倒されるのです。

 最近見るYouTubeが自閉症の16歳の男の子を育てているお母さんのものですが、家族全員が偏食でみんな別々の献立にしなければならないし、こだわりが強い彼は唐揚げとかハンバーグとか食べられるものが限られるので、ハンバーグにはいろいろな野菜をすりおろして入れたり、お母さんは奮闘しています。子育ての最中は無我夢中で頑張るけれど、こうやって細部まで明らかにしてYouTube動画にして沢山の視聴者の支持が得られるとそれが収入になるという時代にびっくりしながら、朝起きて化粧をして食事作りをし買い物の中味やバッグの中身を見せるという同じようなコンセプトなのが画一的だなと思うのです。

 世界中を旅しているユーチューバーも、お酒を飲んで食事して名所を回るというのが一番人気があり、危険地帯や政府の眼をかいくぐってリアルに庶民の暮らしに潜入するものや、徒歩でアラスカからアルゼンチンまで旅する若者の奮闘も元気づけられるものですが、私は世界中からやって来るゲストの生き方や社会やアイデンティティを知ることが一番重要で、そのために私の引き出しを開けて一致するものを取り出せるかが鍵なのです。だからデンマークパパとあとで映画や小説についてメールで話し合ったことはとても興奮したし、パパがなぜウガンダまで到達したのか、いつか聞いてみたい事なのです。もっともっと世界を知りたい、この小さな町にいて出来ることはある、その証が、ドイツで本塩沢の単衣を着ているレナちゃんの写真なのです。