世界中が暑い!

 9月になっても暑い日が続きます。カリフォルニアのサクラメントから来る40代のゲストはエアビーのホストを始めて4年目で、広いお家を貸し出し、好評のようです。夫が好きなアメリカの番組で、古い邸宅を買ってリノベーションして一億以上の価格で販売する番組がありましたが、ひどく汚れているところをいかに綺麗にリフォームして買い手が欲しいと思うものに仕上げるかが腕の見せ所のようで、ベッドルーム3つ、広いキッチン、リビング、芝生の庭など見ているとザ・アメリカンハウスそのものだけれど、私は書斎がないとか仏間がないとか、全く見当違いの感想を持ってしまいます。

 うちからチームラボまで行くのに時間はどのくらいかかるか、銀座で買い物をしているので2時に着く、道路が混んでいるので15分遅れると矢継ぎ早にメールが入り、二時過ぎにタクシーで到着したのは160㌔の偉丈夫のボーイフレンドとスリムなブラックビューティさんで、彼は着くや否や私と彼女にイヤホンを渡し、翻訳機だから日本語で話せと言われ、タイムラグがあって少し遅れて日本語が英語になりスマホの画面にはチャットのように言葉が並ぶのだけれど、とてもめんどくさくて、簡単な言葉で着物を選び着付けるにはあまり良いものではありません。申し訳ないけれど外して、彼女には振袖、彼にはお相撲さんの浴衣を着せ、たくさん写真を撮り、ティーセレモニーをして、彼女は浴衣に着替え和室を見せた時点で4時を過ぎています。

 お寺へは行きたいというので、ハンドバッグや靴やサンダルを持って柴又で浴衣を脱いで駅で別れることにしました。夕方になると少し風が出てきて涼しくなるのですが、驚いたのが電車に乗ると彼はみんなに話しかけ、奇声をあげたり、柴又についても通りすがりの女性を呼び留めて一緒に写真を撮ったりして、フレンドリーというより奇妙な外国人になってしまったことです。今まで来たゲスト達が日本の電車は静かで、外国だと奇声をあげたり騒ぐ人が多いと言っていたのはこのことかとわかって、決して悪気はないけれどやりにくいのです。

 水曜日だし暑いし四時を過ぎているし、参道は閉まっているお店も多く、それでも珍しい参道風景をずっと写メに撮り、お寺の中も少し見て5時になり終了、草履が小さいと途中にあるベンチに座って靴に履き替え、浴衣を脱いでコンビニでジュースを3本買って、東銀座に向かう彼らはあっけないほど簡単に手を振って別れて行きました。また電車に乗ったら騒ぐんだろうなと思いながら、私は彼らにとってone of themなんだなと思う、そう言えば名前も聞かれなかったのでした。疲れも暑さもあるから仕方ないけれど、彼女の顔がだんだんクールになり、次の予定の段取りをつける方が優先になってきていて、本当にそそくさと背を向けていくのを見ながら、これが彼女の文化なんだなと感じていました。41歳で23歳を頭に3人の子どもが大学に通い、夫は?多分いない?やり手の女性だけれど、たまに、かなり苦情を言っているレビューもあり、それは私もそうで、お互い様なのです。家を貸すというのも大変だなと思うのですが、彼の話ではサクラメントにはたくさんの、数え切れないほどの国の人々が住んでいるし、考え方も振舞も様々でしょう。私は4時間の体験しかしていないけれど、それでもかなり苦戦することも多く、一番気になるのはゲストの心の中なのです。この小さな東京の片隅の町にずっといながら、デンマークやウガンダやクウェートの家族の方々と触れ合い、沢山の刺激や心の潤うような話を聞く時、私は本当に幸せな気持ちになります。

 世界は広くて複雑だ、それはみんなが思っている事でしょう。参道を歩いている時、背の高い恰幅の良いアジア系の男性に声を掛けられ、帰りのホームでもお会いしたので話をすると、台湾から来たそうで、そちらも今までにないほど暑いそうです。地球は沸騰している、そんな中で、己の利益のことばかり考えて足元がどういう状態か見なかったらどうなるか。細々と世界中の人々の心の中を見ていくというニッチビジネスを続けていきましょう。