コロナ前にはフィンランドから十人位ゲストが来ていて、日本語が堪能で日本舞踊まで習っている女の子が、私の着物ルームの名前の東風(koti)がフィンランド語では家という意味だと教えてくれ、なんだかぴったりの意味だと嬉しい気持ちになりました。そして今朝、新しいフィンランド語”KOSTAIVE”を知り、それが復讐だという意味がこれからの我々の選択と進む道を間違えてはいけないという指針だと心しています。恐ろしい道が今私たちの前にいま現れています。というか、もともとあったのに隠れて見えなかったのが、今はっきりライトを浴びて全貌を現わし、そこにいたのが高校の時の同級生だったことに、深い驚きを覚えます。団塊の世代の夫たちが第一線から退き、後を仕切っている年代はどこなのだろう、この混乱を引き起こしている元凶の世代は?学校群制度で行きたい高校にも行けず、3科目受験で多方面の知識に乏しいのは私だけかもしれないけれど、70歳を迎えた私たちがやらかしたこと、やらずに済ませてきたこと、夫たちの世代に隠れのほほんと過ごしてきたことが、大きな欠落となって示されているのです。人間の存在の根源に関わる領域を無知ゆえに侵して、知らなかったと逃げ出す場所はもうない、自分で犯した責任は自分が取らなければならない、足元の地面はもう崩れかけてきている、自分が一番先に真っ逆さまに落ちていくのです。
膝のリハビリに通っていたら、今度は腰が痛くなって昨日整形の先生に診てもらい、レントゲンを撮っていただき「凄い悪い腰だね、背骨もS字型に曲がっている」と言われ、子供の頃からそうだったというと、悪いなりに何とかもう少し動けるよう手を尽くそうと言って下さいました。剣道をやっていたという瘦躯の先生は見立てが早く、両膝に手を当てて「もう少し右を良くしないとね」といい、うつぶせにして私の腰に両手を当て、「ここも何とかしないと」という言葉を聞きながら、ほんの一瞬にあてられただけなのにその掌の温かさを強く感じていました。
外国人着付けの写真を少しお見せすると、「これは続けたい仕事だね」といって下さり、ヒアルロン酸を注射しコルセットも付けてくれて少しでも楽になるようにして下さる先生に私は深い信頼感を覚え、70歳過ぎて体の不調が続く時に、こんなにも近くに良い整形外科があることに感謝しています。
私の仕事はただ着物を着せてお寺を案内し、日本の文化を味わってもらうだけではないのです。前に来た台湾のゲストの女の子は、可愛くて明るくて髪を紫に染めていたけれど、心の奥底にある深い哀しみや憤りは、いかに隠そうと彼女がしていても私は強く感じました。悲しみ、苦しみ、いたたまれなさなど、心の中でいろんな感情が充満している、でも、人はそこからもう一度立ち上がろうとする、その瞬間にこそ人間の美しさがあるし、立ち上がる力のもとになるのは、人の愛なのでしょうか、人から助けてもらってもう一度、自分自身を奮い立たせる、そして立ち上がった後、今度は自分がまた別の人を助ける立場になる。そういった経験を積み重ねた人は本当に魅力的で、より輝きを放ちます。そしてその美しさや魂の中にある熱さを表に出しているということはとても勇気のいることで、身体からほとばしる生命力の美しさ、そのエネルギーを感じることが私たちの救いとなり、前に進む活力となるのでしょう。
あえて復讐という意味の名をつけた、得体のしれないコスタイべが十月に登場します。誰に、何のために復讐するのか。人間に復讐するために、影がしていることなのかもしれません。私たち人間がして来た過ちはもう取り返しがつかず、飽和状態になっています。復讐されなければ目が覚めないのか、そうかもしれない。私は私に出来ることをします。