ガルシアという苗字のゲストが予約してきて、連想したのがガルシア・マルケス、なんだか最近”百年の孤独”が文庫本になり人気のようですが、私はどうしても彼の本は読み進めることが出来ず、スルーしてしまいます。だから今日のゲストはコロンビアとかベネズエラかなと思っていたら、定刻に現れたのは浅黒い肌の小柄なヤンキー兄ちゃんと、色白で豊満なガールフレンドで、22歳と20歳、初めての海外旅行、5日間東京だけを回り、墨田区のエアビーに泊まっていて、昨日はチームラボへいき、銀座など回ったそうです。彼はメキシコ人の父とキューバ人の母を持ち、彼女はメキシコ人でカリフォルニアに家族で住んでいて、職業は多分ブルーカラー、良くしゃべる陽気な彼はタバコ吸いで、黒い絽の着物を着て刀を持って写真を撮ってから、夫と二人で外で一服、翻訳機を使いながら二人は楽しそうに話しています。
バストが豊かで長襦袢は着られず、衿だけ付けて何とか赤い振袖を着せると、大きい扇をうまく使って様々なポージングを取る彼女は20歳にしてはしっかりしていて、腕にはなくなったおばあちゃんを偲ぶ文章のタトゥーが刻まれています。ノリの良い彼はティーセレモニーも初めてで、机の上に置かれた説明文を一生懸命音読しています。後で行ったお寺の彫刻版の文章も一生懸命読んでいて、あまり活字に触れる生活をしていないのだろうけれど、よく私の体験を選んで来てくれたなと思いながら、浴衣に着替えて柴又行きの電車に乗りました。レスリングやラグビーが好きで、東京でそれが見学できるかなど矢継ぎ早に質問していた彼は、電車を降りたあと、顔色を変えてパスポートや財布の入った和装バッグを座席において忘れたというのです。これは初めてのケースで、単線で二駅しか通過しない電車だからすぐに駅員さんに連絡して次の駅で保管してもらい、私が取りに行き、無事彼の元へ戻りました。日本だから大丈夫だったけれど、外国では絶対持って行かれる、キューバではすぐ子供たちが寄ってきて「お金をくれ」というそうだから、誰も手を付けないなんて信じられないのです。
陽気で良くしゃべる彼だけれど、この一件以来少し大人しくなり、時間があまり残っていないので駆け足でコースを回り駅に着くとちょうど電車が行ってしまい、15分待たなくてはなりません。今日は待ち時間が多い日だなと思いながら、彼がポカリスウェットをおごってくれたのでありがたく飲み、トークしていたらあっという間に時がたちました。迷惑をかけたので夕飯を私たちに御馳走するというけれど、お気持ちだけ頂いて断り、プレゼントの着物を渡してハグして別れました。
最近の旅系ユーチューバーは、観光地でなく危険な地域や底辺の庶民の家庭の内情もレポートしていて、共産圏国のキューバの食糧事情など政府から配給される品物の劣悪さを動画にあげているので、表向きは葉巻やクラシックカーや音楽など陽気で楽しいキューバで暮らさないで、アメリカに移住しているからこそ、こうやって日本旅行もできるのです。駅で待っていた時、私は彼らに今までのゲストの話をしながら、デンマークパパとウガンダママの写メを彼に見せると、「いい仕事をしている」といってくれました。22歳のキューバの男の子に褒められた70歳のわたしは、妙な気分になりながら、気が付いたのは、世界の恐ろしさ、厳しさを知っている彼らと、そこにお金やパスポートが入ったバッグが置きざりにされて居ても、それに対して全く無関心でいる日本人は、善良なのでなく無知であり、相手に毒を盛られても何も考えずそれを口にする、感覚をマヒさせるために、マスコミやテレビは重大な事実はひた隠しにして、エンドレスに野球選手の話題のみ取り上げ、それが嫌で私は三階で四六時中テレビを見ている夫のところにはいかないようにしています。恐ろしい方向に向かっている列車、鬼滅の刃の映画のシーンを思い出しながら、個性豊かな外国人が次々現れ、知らない感情や事実を教えられる環境にあることをつくづく有難いと思っています。
自分を覚醒させる、正しい道を見つける、鬼と戦っている煉獄さんの覚悟を思っています。