このところ当日の予約など急な仕事が多くなって、身体も頭もついていきません。土曜日はイングランドからリピーターのジェンマが6年ぶりに旦那さんと友達夫婦と4人でやってきて、お土産にチャールズ三世の記念タペストリーを持ってきてくれました。歴史と地理に疎い私はこの年になって初めてイギリスの成り立ちを知り、それを肌身で感じています。イギリスはイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4つの国からなる連合国家であり、イングランドはその中で最大の国で、代表都市は首都であるロンドンのほか、マンチェスター、バーミンガム、ヨーク、リバプール、リーズなどがあり、スコットランドはグレートブリテン島の北側3分の一を占める国であり、イングランドに次ぐ面積を持っています。スコットランドはイギリスの中でも特にイングランドと混同されることを嫌い、表面的には争いはないけれど、強くスコットランド人だと認識しています。首都はエジンバラでグラスゴーなどもあります。ウェールズはスコットランドよりは民族意識がマイルドで、代表的な都市は首都であるカーディエフ、公用語は第一言語がウェールズ語、第二言語が英語で、スコットランドとは異なり、ウェールズではウェールズ語を話せる人が人口の20%程度と比較的多めで、学校でもウェールズ語教育が実施されています。北アイルランドはアイルランド共和国のあるアイルランド島の北東部に位置する国で、公用語は英語とアイルランド語、イギリスからの独立およびアイルランドとの併合を望む派閥と、連合維持を望む派閥が存在していて、1980年代頃までは紛争が絶えなかったのがこの地域だったのだそうです。北アイルランドからお母さんと二人の大柄な娘さんが来た時、無知な私はお母さんに着物を着せながら、エリザべス女王の話をしてしまい、完全無視された経験があるのです。
イギリス人は意外と難しいと思っているのですが、連合国家といってもほとんどイングランドから来るゲストが多くて、保守的で自分たちの暮らしに満足し、あまり悩まないタイプの4人が今回きてくれました。大柄でイケメンの旦那さんたちは同じ保険会社に勤め、一か月日本の各地を旅していて、宮崎の高千穂峡の写メはとても綺麗で、カヌー遊びも楽しんでいます。屈託なく悩みなくと言いたいところですが、まだ暑いので絽の長襦袢に着物を着せると衿が綺麗に出ない時があり、それが嫌でこの前はしっかり補正をして紐もたくさん使って着せたら、蒸し暑かったせいもあり途中で女の子が気分が悪くなったという苦い経験があるので、今回はいろいろ省いて暑くないようにしました。でも衿が綺麗に出ないで、リピーターで着物は2回目のジェンマはそれが気になっていつも襟元を直していて、眉間に深いしわが寄っているのが私は気になり、申し訳なくて、なるべく彼女のそばで話しかけ気分をあげるように頑張りました。
帰りのホームで彼女に子供たちのことを聞かれ、結婚しているのは一人だけで孫もいないというと、あら可哀そうにと言われてしまいました。周りはみんな孫がいるから、そう言われても仕方がないのだけれど、結婚指輪をしきりに見せてくれ、彼らは当たり前の普通の生活が一番いいというのが強い国民性だなと思い、私がよく見ているYouTubeでイギリス人と結婚した日本人女性が、子供たちが結婚して独立した後は、旦那様の友だちと夫婦でいろいろ旅行し、一軒家を借りてみんなで食事を作ってワインを飲んで食べて、トランプして楽しく過ごしているのです。それはそれでいいのですが、私のところへ来るゲストはいろいろ困難なシチュエーションもある中で、他人のことを考え世の中が良くなるようにいろいろな努力をしたり模索している姿を見せてくれ、悩みながら頑張っている姿に私は勇気をもらっています。
その翌日来たゲストはやはりリピーターで、ノルウェイでバーテンダーとして働くイタリア人の可愛い素っ頓狂な沢山Tatooをした女の子が、ホテルで働くノルウェーの大柄な女の子と来てくれました。実は今朝追加の予約が入り、タイの男の子が二人来るというので私はどうやってホスティングするか迷っていました。とても仲良くなって互いに写真を撮り合うような関係になるといいなと思っていたのだけれど、北欧系の民族はどちらかというと重苦しい感じがあって、タイの男性たちとはどうも相性が合わないことは二組がうちで出会った時すぐ感じたのです。CAの36歳の男性は中国とのハーフでカッコイイソフトなイケメンで、タイっぽいスリムな年下の友達と旅をしているのだけれど、なぜ今朝この体験の予約をしてきたのか私は忙しくて聞くことが出来ませんでした。北欧の女性たちに振袖を着せ、写真を撮り、訪問着に着替えさせていると時間がかかったので、とてもタイ男子の相手をする暇がなく、夫に丸投げして二階を案内して仏教徒だという彼らに仏壇を拝んでもらってから、振袖の女の子たちと合流してティーセレモニーをし、男女1人づつ点てて、男性陣は夫と三人で柴又へ行ってもらいました。夫の初ホスティングですが、なんだかこの子達は男性を好むような気がして、それはそれでいいと思い、私は女の子たちに集中していると、やはり面白いのです。ちょっと暗めで怖い?イメージのノルウェーのエンブラは本が好きで日本人では村上春樹や太宰治‼を好み、画家はクリムトやゴッホで、ノルウェーは医療も学費もただで経済も安定しているけれど、ホテルの仕事ではなく自分にあった仕事、出版関係をやりたいそうです。二人とも彼氏を作ることには興味がなく、どう生きていくか深く考えている節があるし、だからイタリア嫌いのイタリア人メリッサとエンブラは一緒にいるのでしょう。男性には計り知れない深淵を持っている女の子もいるのです。結構ふっくらしているエンブラの着付けはちょっと大変だったけれど、黒い振袖にオレンジの帯を締め、眼に濃い化粧をした彼女を二階に連れて行き、二人に羽子板を持たせて床の間で写真を撮った時、その美しさに私はびっくりしました。彼女たちの醸し出す精神的な複雑さと日本の着物が結びついて、異次元の美があります。思わずエアビーのサイトの写真に出していいか聞いてOKを取りました。
イギリス組の健全な着物姿とは一味も二味も違う。みんな違ってみんないいのです。タイの男の子たちだけをホスティングするなら、それはそれでまた突っ込んで話しをしますが、夫は健全に観光案内してくれ無事終了、彼らは私たちが戻る前に帰って行き、結局私はお茶を点てただけだったけれど、翌日寄越したレビューには私にも感謝してくれていたのです。また帰ってきたら会いましょうと結んであって、その時は私はみっちり相手をしたいと思うのです。
わたしたちは世界中から来る沢山のゲスト達とかけがえのないひとときを過ごし、彼らから素晴らしい贈り物をもらっています。生きるということ、孤独ということ、救いということ、何らかの形でそれを考えているゲスト達の姿を見るたびにいつも、私はひとりじゃない、世界中に友がいると思って幸せな気分になるのです。この所知らない国からの予約が多くなりました。「Reunion」?どこだ?一生懸命探します。
相変わらず世界は広くて複雑です。でも訪れてくれるすべてのゲストに私は言いたい、
「あなたは ひとりじゃない」って。