十月最後のゲストはハンブルクからの親子三人でした。背の高い花屋さんのママと少し小柄なパパと20歳の息子さん、ママは英語が苦手だそうでそれまで全部ドイツ語でメールのやり取りをしていて、文章はグーグル翻訳にかけるからいいけれど、会話はどうしようと悩みました。テレビドイツ語講座を見ていた時、簡単なインパクトのある言葉は覚えたのですが新しい言葉は無理でした。
ティーセレモニーとお寺や仏教の説明は、日本語と英語とドイツ語の三段構えのレジュメを作ってそれを渡せばいいと腹をくくり、後から予約してきたサンフランシスコに住む40代のリンダがドイツ語を話せることに期待?しました。最近ホスティングすることにやる気満々の夫は早くから下に降りてきて外へ出て駅の方向を見ていて、背の高い三人組が来たというから私も外へ出ると、違う方向へ曲がったそうで、夫は自転車で追いかけて行きました。その間に黒髪のアジア系の女性が現れ、挨拶するとカンボジアがオリジンだそうで、日本人体型の人懐っこい方です。そこへハンブルク組が夫と賑やかに現れ、何と背の高いママは小さな花束を3つ持っていて、1つは私に下さり、後は写真を撮る時に使うと言います。
20歳の息子君はがっちりした背の高いドイツ人らしい男の子で、「学生?」と聞くと違うと言います。??何というか重い英語で噛みつくようにしゃべって来るのが印象的で、晩婚で40歳になる少し前に産んだ息子君をママが溺愛している感が微笑ましくもあり、疑問でもあるけれど、人のことを言える私ではありません。でも4年前に来た身長が2mあるポールも勉強や学校は好きでないようだったし、真面目に経済やITや心理学など勉強しているという学生のゲストが多かった中で、たまに来るドイツ人の男の子のやる気のなさは目立ちます。朝は寒かったけれどお昼頃に雨が上がって日が差してくるとだんだん暖かくなり、息子君には紋付きの最上級の青い紬を着せ、パパには明るいブルーの薄手の紬、179センチのママは並べて置いた私サイズの着物は一瞥しただけで却下、着物の棚からピンクとベージュの鳥の模様の付いたカラフルな訪問着に振袖用の帯、帯締めは紫を選び、おはしょりが出るか心配しながら着せると、細身なので何とか大丈夫で、ショートカットの頭に赤い髪飾を付けてとても素敵です。
ママは嬉しくて仕方ないし、パパは一生懸命写真を撮っているけれど、いかんせん息子君はお付き合い出来ているからつまらなそうで、リンダを着付けている時間はドイツ組は二階を探訪、下りて来てから四人でティーセレモニーをし、最後に息子君にお茶を点ててもらって無事終了、そのまま柴又へ出かけました。息子君はロールアップしたジーパンの裾が気になり、着物をめくっては何度も裾をたくし上げています。柴又に着いても、ママはいたるところで花を持って写真を撮るのを息子君は退屈そうに見ているけれど、ママが呼んで一緒に写真を撮る時はちゃんと付き合うのです。ママのメールには家族が一番大事でいつも一緒にいるとあり、だんだん大人になって行くと親離れしないといけない、でも学校へ行っていないなら、なかなかそれもできないのではないかと思うのです。男の子の育て方は難しい、かまいすぎても、ほっておいてもいけないけれど、どんなに時間がかかっても自分で自分の道を見つけるしかない。帰り道駄菓子屋さんへ寄った時、クレヨンしんちゃんのキャラクターの小物を見つけて「チンチン」といって喜び、日本ではこのキャラクターは認められているのかと聞いた時が一番彼の素の姿だった気がします。キリスト教よりも仏教や神道に興味があるという彼に、英語の禅の小冊子をあげたけれど、これからどうやって自分の芯を見つけていくのか、彼の人生はどう進んでいくのか気になりました。
でもママは明るく強く自分の人生を歩んでいます。難しい、難しい所です。