このところずっと心が決まらないで文章が書けず、最近来たゲストのことも記せずにいました。ハングル語しか話せない中学生の女の子2人に着物体験をさせたいという保護者からの依頼は全部ハングル語で、翻訳して読みながら、お寺やお茶体験は無理だろうしどうやって体験を組み立てようかと悩んでいました。定刻少し前に現れた女の子たちはかなり体格が良くて、これは大人の振袖が着せられるとほっとしていると、紫の振袖を選んで髪はロングに垂らした女の子は、浅草で買った狐の面を付けるのでびっくりしたのだけれど、それがアクセントになり、襟元に面を下ろしたり頭の上に被ったり、とても可愛くてインパクトがあるのです。
着物のサイトを見てこんな格好がしたいと見せてくれるゲストもいたことを思い出し、韓国の方はユニークなのでその路線で行こうとちょっと歩くけれど山本亭まで足を延ばしました。参道でもお寺の境内でも山本亭でも保護者たちはたくさん写真を撮り、帰り道では夕日が差して女の子たちの背後に素敵なシルエットを作って、それと狐の面が何とも言えぬ新しい情緒を作り出し、私は黒澤明監督の映画「夢」の中の狐の嫁入りというオムニバスのシーンを思い浮かべていました。女の子たちとはスマホの翻訳機を使って電車の中で少し話が出来、打解けはしないものの何とか4時間の体験を終了し、彼女達は無事帰って行きました。
韓国に帰ってからお母さんからレビューが来て、私が一生懸命案内し説明している様子にとても感激し、浅草で着物を着て散策するという選択を取らなくてよかった、これからもビジネスを頑張って下さいと書いてあるのが韓国の方らしいなと思いながら、なんだか意外な気もしました。その後にフランス人のハネムーンカップルが来て旦那様はモーリシャス諸島の出身で、自然の中で育ったので富士山を見て感動したと言い、ゴーギャンが好きというおおらかでシャイな彼は奥様の写真を撮ろうという意欲があまりなくて、小柄でおきゃんな奥様はすぐスマホを私に渡して写真を撮ってくれというのが微笑ましいのでした。
翌日パリに帰った奥様からレビューが来て、普通のお茶体験と着物を着ることだと思って期待していなかったけれど、全く違くてとても心に残る一日だったとあり、またまた意外だったのです。十月はとても忙しかったけれど十一月は予約が少しでどうしてかと思ったら、新しいホストを優先して全面にだし、古いホストは探してもなかなか見つからない後ろの方に追いやられているのに気が付き、これではしょうがないなと納得しながら、もっともっとマニアックに攻めるために英語の百人一首を勉強し、日本の古典を別の角度から見ることが出来るようにしたいと考えています。日本橋で開催されていたバーミヤン大仏展を見に行き、ガンダーラ、中国、朝鮮、そして日本と繋がって来た仏教や仏様の変遷をまじかに見て、もっと柴又の仏教彫刻についての考察を深めなければならない、深く掘り下げなければならないことが沢山あるのです。すべてに感謝し、それを何らかの形でみんなに返せるようにしたい、静かな決意を漲らせています。