辺鄙で静かで人通りが少なくて、「ここは東京?」とよくゲストに聞かれていた我が町が突然変化しています。外国人の団体がスーツケースを引いてぞろぞろ歩いている姿をたくさん見かけるようになり、新築の建売住宅がエアビーの宿泊施設になっていきます。この地域の宿泊料金は値段が安いとこの前来たゲストが言っていたけれど、中川のかわっぺりに建てられた違う会社の宿泊施設も立派で、外国人に利用されているようですが、なんだか異様な気がしてきました。近くに住む中国人の女性が中国の家を売って2軒建物を買い、エアビーのホストになったというし、押し寄せる波のスピードが速くて飲み込まれそうな恐怖も感じるのです。そう言っているうちに、今朝近くのコンビニに強盗が入ったというニュースが報じられ、いくら安全な日本とは言え川沿いの暗い夜道を歩くのは危険だということを忘れてはいけないのです。
法事に出掛けるという知り合いの方の喪服の着付けを早朝している間に、お宮参りのお嫁さんの着付けの依頼の連絡が入り、人さまの役に立つということはありがたいことだと改めて感じています。翌日中国の21歳の女の子が急に予約してきて、小柄な可愛い彼女に赤い振袖を着せて山本亭へ連れて行くと、様々なポージングを次々してくれ、私は楽しく沢山写真を撮りました。後で写真を送ったら、素晴らしいフォトグラファーだと褒めてくれたけれど、何百回もゲストを連れてホスティングをしているとコツもわかってきます。
着付けが不安な時はせめて写真だけはそれがわからないように角度を変えて撮ってみたり、ゲストの表情が一番良い時を狙うのだけれど、昨日オーストラリアから来た若い夫婦と1歳半の女の子には苦戦しました。赤い被布を羽織った、片時もじっとしていない可愛い彼女の世話を焼くママの良い表情が、なかなかうまく写真に撮れないし、色々な問い合わせをもらっているのでママの期待感もわかるのだけれど、子連れはやはり難しいのです。2時には昼寝をするため10時のスタート、でも当然お昼を挟むから、天祖神社へお詣りにいったあと、近くの餅菓子屋さんでおにぎりやいなりずし、みたらし団子を買ってみんなで食べ、YouTubeを女の子に見せて大人しくさせている間にティーセレモニーを皆でして結構盛り上がり、私はこの時出来るすべてをして、プレゼントの着物と帯を渡し、3時間で終わらせて彼らに別れを告げました。
満足していない部分も多いと思うけれど、おばあちゃん感覚で出来ることは精一杯して、でもやはり疲れました。できる限りのことをしたと思っても、評価されなければ自分の努力が足りなかったと思わなければいけない。どうすれば喜んでもらえる体験になるのか。何が一番求められているのか。でも私がこれまでとても興味を持っていて、自分自身が本当に大好きなものを突き詰めて提示することしかできない気がするのです。同じようにその分野を楽しいと感じてくれるかどうかはわかりません。
着物が好き、歌舞伎や能など日本の文化が好き、抹茶を点てて静かに飲むのが好き、仏教や神道などいろいろな宗教について考えてゲストと語り合うのが好き、音楽や美術、文学など好きな分野に没頭するのが好き、そんな好きなことがゲストとの会話で出来る喜び、楽しさがあると同時に、生きている苦しさや、悲しさ、辛さも相手から感じ取って、時には一緒に泣くのです。
自分の内側から沸々と湧き上がる個人の幸せって何だろう、生きがいと幸せは同じものなのでしょう。私がやっていきたいもの、ゲスト達と共有したいものは、生きているってやっぱりいいねという感情なのです。どんなに町が変化しようと、私の気持ちは変わらないのです。