11月30日は夫の誕生日、ゲストも来ないので柴又へ鰻を買いに行こうと思っていたら、前日の夜シカゴの50代の女性から急に予約が入りました。プロフィールがわかったのは当日の朝で、182センチ138㌔とあります。一番大きな振袖を着せて写真を撮ったら洋服に着替えて柴又へ行き、お寺をじっくり見てもらったらいいかと考えているうち、青戸からタクシーで来ると連絡があり、歩くのが大変でいつもタクシーを使うと書いてあります。柴又へはいけない、どうしようと思って外へ出るとちょうど到着、大きな女性でバストもヒップもかなりあり、中へ入ってもらいいろいろ着物を羽織って見ても全く前が合わず、今までで一番大きいタイプです。たまにサイズを知らせてきて着物があるかと問い合わせが在ることがあるけれど、初めにわかっていればお断りする所なのですが、彼女はなぜ自分の着られるものがないのかと怒りだし、袖が短い、生地が足りないなど早口でまくしたてます。大きいのをなぜ作らない、アメリカには太った人がたくさんいるのにと何十万もする振袖を羽織りながら文句を言う彼女を何とかなだめ、娘の写真集を見せてアレンジして着れば着物を楽しむことが出来ると納得させることろまでこぎつけました。袖が短ければレースの付いたアームショルダーなどでアレンジして着ればいいしタートルネックセーターの上に着ることもできるなどといって、振袖を羽織って肩から黒いレースをかけ、ショートヘアにはヘアバンドと髪飾りを付け、扇子や刀を持って写真を撮ることが出来ました。
ティーセレモニーも喜んでした後、お寺の庭園で着物姿で佇むゲスト達の写真を見て、自分も行きたいというので羽織る用の赤い大きな着物を持って出かけると、改札でスマホのスイカが使えず駅員さんに聞くと2日前に成田から青戸へ来た時タッチせず外へ出たので未払いになっていると言われ、995円清算して無事電車に乗りました。ところが彼女はその金額が何なのか納得せず、成田から青戸なら1150円かかるはずだからおかしいと電車の中でずっと憤慨しています。どこでも文句を言うタイプだなと思いながら何とかなだめ、柴又についてまた駅員さんに聞くと、成田から青戸の路線は二つあって値段が違うから、安い方の金額だと説明を受け、翻訳して説明するとなんだかまだ納得していません。
とにかく参道を進み、いろいろ興味を持って見てくれちょっとほっとしてお寺の中に入ろうとすると自分は仏教徒でないから中へ入れないと言い出し、4時になっていたので庭園は閉まっているから山本亭に行き、夕暮れの庭で赤い着物を羽織ってポーズを取り彼女のスマホでたくさん写真をとったのだけれど、日も落ちて来て光も弱くなり、顏がどうしても黒ずんで撮れてしまいます。廊下で私のスマホで撮ると、着物の赤が燃えるような色で写り、なんでんだろうと思いながらそれからはずっとそれで撮り続け、頑張って歩いて帰宅、結構疲れたようです。着物を買えるかと聞かれていたので、一枚プレゼントするというと20歳の娘さんに紫のちりめん風の振袖が欲しいと言い出し、それは小さいし沢山のゲストがこれまで好んで着てくれた人気の着物だからだめだというと、憤懣やるかたない表情で何やらまくしたてています。
まあまあ文句の多い性格だなと思いつつ、一番大きい赤い振袖と帯二本を風呂敷で包んであげたけれどお礼も言わず不満げです。5時過ぎたのでタクシーをエアビーのサイトで呼び、青戸の住所も入力していたけれど、間もなく来た運転手さんは違う住所が記されて居るといい、わたしが住所を書いた紙を渡すと、ようよう乗り込んだ彼女はまたまた不満げな顔をして、お礼もさよならの挨拶もせず去って行きました。もし入力された違った住所に到着したら、またひと騒動あっただろうし、とにかく彼女はトラブルメーカーなのだとわかり、明日はベトナムへ行くと言っていたからもう大丈夫だろうとほっとしていると、すぐにメールがあり、彼女のスマホで私が撮った写真がひどいものばかりで、これでは気持ちよく帰れないと嘆きの言葉が連続して送られてきます。夫が部屋の中で撮ったのは良く撮れているけれど、光りが弱い所では全く綺麗に撮れていないと私も思いつつ、民族によって顔の色がダークになるのは仕方がないのです。
心の持ちようが写真には出ると秘かに思いながら、わたしが撮ったものを圧縮ホルダーで送ると、スマホでは見れない、とすぐ苦情がきて、エアビーのサイトでとりあえず4枚送ると、圧縮ホルダーは家のパソコンで後で見ると納得したようです。エアビーを連呼し、しょっちゅうスマホを触っている割には正確でないことが多く、自分のミスを納得せず他人のせいにする彼女はベトナムではスパに入りまくると言っていたけれど、施術するベトナム人も大変だろうと思うのです。帯はともかく、振袖を持って行っても畳めないだろうし、くしゃくしゃになって置きざりにされる事を思うと悲しくなるけれど、明らかに最近訪れる訪日外国人は人間性が違う、民度が違うのです。もう12月はゲストが来なくていい気がしてきました。
でもこうやって色々な国からいろいろなタイプのゲストが来てくれるというのも、わたしの修練にとって必要なのです。いいことばかりではすまない。嫌なことも理不尽なことも辛いこともみんな耐えて、何とか前に進んでいく術と心の強さを持たなければなりません。さあこれから沢山の着物たちを畳みながらねぎらいましょう。旅立って行った振袖にもどうぞ神の御加護がありますように。