VOVA 新星

 柴又からの帰り道、ゲストと話しながら駅のエレベータ―に乗り、降りてきた時に、中に一緒にいた方から声をかけられ、英会話のNOVAにずっと通っているのだけれど外国人と話す機会がないので、私のうちまで来て会話してみたいと頼まれ承諾したものの、ティーセレモニーをしていると突然「どこの国の方ですか」などとゲストに話しかけ、一生懸命話したい気持ちはわかるもののTPOをわきまえずその場のシチュエーションを考えない態度に私はイライラして、思わず「静かにしてください」といってしまいました。駅前のNOVAは有名で、夫も英会話教室を探していた時検索してみていたけれど、お値段も高かったようです。

 羽生選手のアイスストーリーの解釈本を読んでいる時に、主人公の名前がNOVAで、どんな意味かと調べて見ると英会話教室のサイトがすぐ出て来るのに笑ってしまったけれど、本当の意味は「宇宙の新星で、突然明るくなり、以前よりも何倍も明るくなる」なのでした。12月7日に埼玉アリーナで行われた「Echoes of Life」をスカパー放送で見て、もう次元が違う才能の持ち主たちが作り出す時空の素晴らしさ、鮮明さに圧倒されました。このところ国の政治を司る人間たちの腐敗しきった能力のなさに寒気を覚える日々だったのですが、「夜と霧」を書いた精神科医のフランクルさんが、アウシュビッツの収容所にいた時も、世の中には優れた人とそうでない人がいると書いていたのを読んだ時、どんな世界にも、どんな場所にも、優れた人とそうでない人がいるという事実は厳然としてあると悟ったのです。

 反対勢力を抹殺して上り詰めた人間たちの浅ましさがあぶりだされ、今まではちょっとしたマイナス面でも徹底的に叩き引きずりおろしてきたマスコミやテレビ、新聞が、悪事を働き続けているトップに何も言わないこと自体、彼らがどちらの種類の人間なのか証明しているのです。こんなに簡単に善悪がはっきり示されている普通の時代に私たちは暮らしている、教育界も産業界も政界も全てが歪んでいるから、何のために生きているのか、何のために努力すればいいのかわからず、不登校になる子供も増えていきます。真実が欲しい、正しい光が欲しい、正しい生命倫理が明かされて欲しいと思っている私たちにとって、このアイスストーリーは救いであり、どこへ進めばいいかの指針なのでした。

 他者を蔑ろにし、淘汰し、排除することは、反対に自己を見失うことに近づいてしまうのです。私たちは強烈な「光」と「音」により、一瞬ですべてを無にされる恐ろしさを歴史から学んでいます。そして怖ろしい天災により、全てが壊れていく悲しみも知っているのです。私利私欲に目がくらんでいる暇はないほど、危機は迫っている、何故気が付かないのか、何故改めようと思わないのか、でもその負の連鎖から脱出するのは相手と戦う事ではなく、戦争を仕掛けることでなく、自分を見つめ考え抜き、自分の中の能力を高め、それにより思惟を高めていけるかどうかにかかっています。

 羽生選手のあくなき向上心、努力、優しさは、人々の心に深いインパクトと慈しみを与えてくれ、今何を頑張ればいいのかを教えてくれます。お宮参りの仕事が終わり、何とかうまくいってほっとしている間に、最近増えた訪日外国人家族が初めて玄関のポスターを見て着物を着て写真を撮れるかと問い合わせしてきました。家族6人、ヒジャブを被ったふっくらした女性が着物を着たいようで、結局着るのはひとり、後は付き添いです。着物が小さい、色が気に入らない、それなら浅草のレンタルショップへ行った方がいい、お断りして、ポスターをはがしました。もうこの役割も終わりました。私も違う形で頑張っていこうと思います。転換期です。指針があることが有難いのです。